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「・・・おい、。」
「ん〜?」
久し振りに遊びに来た三蔵に手招きされて、ひょこひょこと近づく。
「何?」
「お前、なにに憑かれてる。」
「「「は?」」」
その場にいた悟浄、悟空と一緒に思わずマヌケな声を上げる。
何?何がつかれてるって???
「三蔵、何言ってるの?」
「疲れてるって、アッチの仕事以外なんかあるのか?」
「の“しごと”って三蔵より忙しいのか?」
三人が同時に三蔵に詰め寄った瞬間、頭にハリセンが振り下ろされた。
「一度に喋るんじゃねぇ!鬱陶しい!」
「「「っつ〜・・・」」」
頭を押さえてうずくまるあたしの肩に三蔵がポンッと手を置いて、まるでゴミを払うような仕草を繰り返す。
「???」
「・・・ったく、この馬鹿が。」
「え?え?」
三蔵の仕草と声が、今言った事が冗談じゃない事を示している。
あたしが・・・何に憑かれてるって?
「ここ最近、妙な気配を感じなかったか。」
三蔵のその言葉はあたしではなく、後ろに立っている悟浄と八戒の方へ向けられていた。
あたしは三蔵の言葉にただただ首を傾げるだけ。
「コイツが鈍い所為で相手も手が出せてないらしい。ここ数日、コイツに変わった事はねぇか。」
ポンッとあたしの頭に手が置かれ、だんだんと自分がヤバイ状況に置かれている事が身に染みて来た。
あたし・・・一体何にとり憑かれてるの!?
「変わった事といやぁ最近夕食後すぐに部屋に戻るくらいか?あとはこっち来た時やけに疲れてンな。」
悟浄が煙草を灰皿に置いてチラリとあたしの方へ視線を向けた。
その時初めてあたしは・・・悟浄から視線を反らした。
『涼』の事、庇うわけでも隠すわけでもないのに・・・何故かこの時は悟浄の目が見れなかった。
そんなあたしの様子を見ていた八戒が、小さくため息をつくと同時に悟浄の説明を補足し始めた。
「ちょうど1週間前からです。夕食を終えるとすぐに自室へ戻り、たまに廊下を通ると何方かと話しているような声が聞こえました。」
「・・・八戒、てめぇが俺を呼んだ理由はコレか。」
「あぁ、やっぱり分かりました?やはりこういう事は専門の方に伺った方が一番かと思いまして。」
「・・・専門じゃねぇ。」
そこまで言われれば鈍いあたしでも大体予想はつく。
・・・まさか、まさか!!
さぁっと血の気が引いて目の前の三蔵に縋るような視線を向ければ・・・射抜くような紫暗の瞳がまっすぐあたしを見てこう言った。
「てめぇが夜な夜な喋ってるヤツは・・・この世の者じゃねぇ。」
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